JIMS100報告

 11月26日(土) 大阪府・ホテル阪急エキスポパークにてJIMS100記念特別セッションが開催され、学会後には、記念パーティが行われました。

  • JIMS100 特別セッション
  • JIMS100記念パーティ
  • JIMS100記念パーティで使われたプレゼンテーション資料(抜粋) PDF

JIMS100特別セッション1

ミート・ザ・エディター

 国内関連学会の学会長、学会誌編集長をお招きして、各学会の研究の動向、学会誌への投稿促進のための方策などについてプレゼンテーションして頂きました。以下はその概要です。

大垣昌夫氏(慶応義塾大学)行動経済学会2 会長

 行動経済学は心理学を経済学に導入したものでもともと学際的である。1970年代のKahneman and Tverskyのプロスペクト理論、1980年代のShillerの行動ファイナンスなどが源流。筒井義郎氏(大阪大学)が80年代にShiller教授と共同研究を行い、大阪大学でパネルデータを収集してきた。
 当学会は2007年に設立され、毎年12月に全国大会を開催している。行動ファイナンスなど実務家が興味をもつ分野もあり、実務家会員もいる。マーケティングのトラックもある。学会誌『行動経済学』は2008年に創刊。投稿から2ヶ月で査読することが原則。マーケティング関連の掲載論文もある。

猿渡康文氏(筑波大学)日本オペレーションズ・リサーチ学会3 和文誌編集長

 Informs4 がMarketing Scienceを発行していることにみられるよう、オペレーションズ・リサーチ(OR)とマーケティング・サイエンスとは関係が深い。日本オペレーション・リサーチ学会では、英文誌、和文誌、機関誌を発行している。機関誌では過去に何度もマーケティング関連の特集を行った。
 査読は3ヶ月をメドとする他、論文誌への投稿促進のため、論文賞を設けた(副賞30万円)。もともと応用的な側面が強かったが、約2000名の会員のうち多数は大学の研究者。実務家に来てもらうために事例交流会も実施している。

竹村和久氏(早稲田大学)日本消費者行動学会5 会長

 日本消費者行動研究学会(JACS)設立趣旨6 にみられるよう、もともと学際的な志向が強い。学会は年2回開催され、統一論題を設定。学会誌「消費者行動研究」の査読は6ヶ月以内としているが、実際はもっと早い。採択率は35%程度。
 元々学際性を志向しているものの、商学系の研究者が中心となっている。経済学、心理学などの分野の研究者が入ってくる方策が必要。海外の真似ではない研究を行うことも重要。

新倉貴士氏(法政大学)日本商業学会7 「流通研究」編集長

 学会誌『流通研究』は1998年から発刊。年4回発行。編集部でクイックチェック。査読体制はJIMSと同様(編集委員長がエリアエディターを指名、エリアエディターが2名の査読者を指名)。2011-15年の採択率は36%。英文誌も発刊予定。

星野崇宏氏(慶応義塾大学)行動計量学会8  和文誌編集長

 故・林知己夫氏が中心となって1973年に設立された。現在の会員数は900名程度。統計関連学会としては日本統計学会に次ぐ規模である。人間の行動の計量的な研究方法の開発、適用を旨としていることにみられるよう、学際的な志向が強い。会員にも世論調査、社会調査、マーケティング関連の実務家も多い。
 学会大会は4日間かけて行う。研究報告、ポスターセッションの他、各種手法のチュートリアルを開催している。英文誌Behaviormetrikaは年二回発行。和文誌「行動計量学」がある。査読1回目は6週間以内、2回目は4週間以内としている。今後は展望論文、特集論文や応用事例の促進、追試験も重要だと考えている。
 英文誌をつくると、同じ英語を書くならばインパクトの大きい欧米の雑誌に投稿しようというインセンティブが働きやすい。ただし、当学会の英文誌Behaviormetrikaは、この分野ではPsychometrika9 に次ぐものと高く評価されており、クオリティの高い論文が掲載されている。


講演頂いた先生方。左から大垣、猿渡、竹村、新倉、星野の各氏

    1. JIMS100特別セッションの概要は、会員である永家一孝氏(日経広告研究所・主席研究員)がまとめられた下記の記事を参照させて頂いた。日経広告研究所 広研レポートOnline(要会員登録)https://www.nikkei-koken.gr.jp/report/kokenReport.php?recno=1426
    2. http://www.abef.jp
    3. http://www.orsj.or.jp
    4. https://www.informs.org
    5. http://www.jacs.gr.jp
    6. 日本消費者行動研究学会 設立趣意書(PDF)http://www.jacs.gr.jp/info/shuisho.pdf
    7. http://jsmd.jp
    8. http://www.bsj.gr.jp
    9. http://link.springer.com/journal/11336

パネルディスカッション 「マーケティング・サイエンスの学際的視点」

 阿部誠(東京大学経済学部・日本マーケティング・サイエンス学会『マーケティング・サイエンス』編集委員長)を座長、講演頂いた先生方をパネルとして、他分野との交流、アカデミアと実務との交流、各分野におけるホットトピック等について議論しました。

阿部(編集委員長)

 他分野との交流、学際的な研究は重要だが、交流することによって学会のアイデンティティー喪失の恐れがあるのではないか。交流することのメリット、デメリットは?

大垣氏

もともと経済学に心理学と導入して始まった学会。経済学の稀少資源の配分がコアとなる。それがあれば経済学のコアは確保される。

猿渡氏

ORは第二次大戦時の作戦立案支援が源流。ファイナンス、マーケティングなどはORから分派したと考えている。

竹村氏

対象が消費者、アプローチは多様であり、アイデンティーの喪失といった問題は生じない。

新倉氏

商業、金融、ロジスティック、情報などの分野と関連しながら発展してきたもともと、学際的な学問である。ただし、学会の中心課題から離れている論文の学会誌への掲載は困難。

星野氏

かっては研究分野によっては計量的な研究が受け入れられないこともあったようだ。そのような分野の計量的な論文を掲載するという意義もある1。 現在は、いろいろな分野で計量的なアプローチが受け入れられているが、学際的であるという本学会の特徴は変わらない。

阿部(編集委員長)

 実務におけるトレンド、ニーズどのように対応しているのか?

竹村氏

実務家による学会報告もあり、一定の交流はある。ただし、学会なので実務的な報告のみではなく学術的な側面が重要。

猿渡氏

実務家による学会発表はあるものの、論文化については社内のデータを公開できないことが問題となる。実務では様々な流行があるが、長期的に重要なテーマを機関誌などで取り上げている。

大垣氏

実務家会員への対応として一般向けセッションを開催。最近の大会では「人工知能と金融マーケットの未来(2016年)」「ビッグデータとファイナンス(2015年)」がテーマ。

星野氏

社会調査、マーケティング関係の実務家による学会発表は多いが、論文は少ない。学術的な貢献を明確にし、その背景も含めて研究することが難しいためだろう。そのあたりを支援する仕組みが必要。

新倉氏

重要なトレンドを見極める必要がある。学会誌の特集号ではそれらの中で重要なものに、ある程度対応している。

阿部(編集委員長)

 学会の現在のホット・トピック、およびマーケティング・サイエンスとの関連は?

星野氏

調査方法による回答の差異、インターネット調査で顕著な、いい加減な回答の評価などが重要。これらはマーケティング・サイエンスとも密接に関係する。実務との接点が多いJIMSには、実務家との橋渡しを期待。

新倉氏

サービスの測定、オムニチャネル、ブランドコミュニティなどが重要。マーケティング・サイエンスに対しては、バラエティシーキングなどの計量的な分析の発展を期待。

竹村氏

解釈レベル理論、制御焦点モデルなど、社会心理学的な理論、ニューロ・マーケティングなどがある。ニューロ・マーケティングからの知見を組み込んだマーケティング・サイエンス的な研究があり得るのではないか。

猿渡氏

オリンピック、パラリンピックへの貢献が一つのトピック。人の流れのシミュレーション、需要予測、その制御を提案するというのが一例。ORではモデルを前提として分析するが、マーケティング・サイエンスのデータ・ドリブンという別の視点も重要。

大垣氏

ソーシャル・キャピタル、絆などがキーワード。マーケティングでいう企業、顧客を共同体と考えれば、これらの研究への貢献も大きい。


パネルディスカッション 手前が阿部・編集委員長

    1. 参考)その事例として紹介されたのは、下記の論文(無料公開)
      高橋伸夫 (2003), “ぬるま湯的体質の研究が出来るまで -叩かれることで目覚める-“,赤門マネジメント・レビュー, 2 (6)
      http://www.gbrc.jp/journal/amr/open/dlranklog.cgi?dl=AMR2-6-2.pdf

JIMS100記念パーティ

100回大会を記念して、記念パーティを開催しました。

開会挨拶およびJIMS設立時の振り返り

井上哲浩・代表理事(司会)の開催挨拶後、JIMSの設立趣旨を確認し1、設立総会時、その後JIMSの発展様子を写真を交えながら紹介しました。当日資料(抜粋)はこちらからダウンロードできます。


第一回総会の様子:京都国際会議場


第一回総会 集合写真:京都国際会議場

歴代代表理事・編集長からの祝辞など

以下の先生方から、学会にまつわる話題や今後の展望などの(ビデオ)メッセージを頂きました。

山中均之(甲南大学名誉教授) ※ビデオメッセージ
  代表理事:1991年~1999年 理事:1983年~2001年
中西正雄(関西学院大学名誉教授)
  代表理事:1999年~2005年 理事:1981年~2007年
片平秀貴 (丸の内ブランドフォーラム)
  代表理事:2005年~2011年 編集委員長:1995年~1999年 理事:1987年~2013年
杉田善弘 (学習院大学)
  代表理事:2011年~2013年 編集委員長:1999年~2001年 理事:2001年~2015年
中島 望 (宮城学院女子大学・大阪大学名誉教授)
  編集委員長:2007年~2011年 理事:1995年~2013年
小川孔輔 (法政大学) ※ビデオメッセージ
  代表理事:2013年~2015年 編集委員長:2001年~2007年 理事:1993年~

海外研究者からの祝辞

海外のマーケティング・サイエンス研究者からもビデオメッセージを頂きました。

Dominique M. Hanssens
 Distinguished Research Professor of Marketing, Anderson School of Management, University of California, Los Angels
 President, Informs Society for Marketing Science
Lee G. Cooper
 Emeritus Professor of Marketing, Anderson School of Management, University of California, Los Angels
Michel Wedel
 Distinguished University Professor and PepsiCo Chair in Consumer Science, Robert H. Smith School of Business, University of Maryland
Murali Mantrala
 Sam M. Walton Distinguished Professor of Marketing and Chair, Department of Marketing, Robert J. Trulaske, Sr. College of Business, University of Missouri
Co-Editor, Journal of Retailing
Hirokazu Takada(高田博和)
 Professor of Marketing, Zicklin School Of Business, Baruch College/City University of New York

歴代代表理事・編集長への花束贈呈

出席頂いた、中西正雄。片平秀貴、杉田善弘、中島望各氏に花束を贈呈しました。


左から、中島、杉田、片平、中西、各元代表理事・編集委員長

記念写真

阿部・編集委員長の乾杯の後、パーティが開催されました。パーティ中も過去の総会の写真などが投影され、想い出話などで盛り上がりました。
その後、全員で記念写真を撮影し、JIMS150、200への発展を期しつつ散会となりました。

各種媒体による報道

JIMS100に関して、下記の媒体で紹介されました。

  • 日経広告研究所 広研レポートOnline(要会員登録)
    「日本マーケティング・サイエンス学会、第100回研究大会で学際研究を議論」 記事掲載HP
  • 朝日新聞社メディアビジネス局ウェブサイト 記事掲載HP
  • 宣伝会議AdverTimes(通称アドタイ)
    「日本マーケティング・サイエンス学会が第100回研究大会を開催」 記事掲載HP
  • 朝日新聞大阪本社版2016年12月1日夕刊(文化面)
  • 日本マーケティング協会 『JMAマーケティングビュー』2017年1月新年号8面
  • 有斐閣『書斎の窓』2017年3月号「マーケティング・サイエンスの過去・現在・未来ーJIMS第100回研究大会を終えて」 記事掲載HP